このブログでデービッド・アトキンソン氏のことに触れるのは2回目だが、菅新首相が彼の主張を政策に生かし、正式な諮問機関の委員にも起用しているというニュースを耳にし、再度コメントしたいと思う。
4年前の2016年に新幹線福井延伸問題で福井の課題を討論した折、氏の著書「新・観光立国論」を紹介されたのがきっかけで、その後「新・生産性立国論」、昨年は「日本人の勝算」を読ませて貰い大いに共感している。
日本の企業が生産性を高め付加価値を上げる必要があり、その為には企業規模の拡大は不可欠で、企業の淘汰、合併も必要という主張には賛成している。しかし、感情的に受け入れられるか、多くの日本人からシンパシーと支持を得られるかとなると疑問な部分もあると感じている。
今、日本が直面している問題として少子化と超高齢社会が迫ってきていることだ。その中で一人当たりの生産性を高めることとされているが、女性の平均年齢が2020年50歳となり、65歳以上の人口比率が23%となっている。高齢者にとって生甲斐や健康の為にもやりがいを持って働ける場を作っていく必要があると考えているが、それは必ずしもフルタイム、ハードで知的生産性を要求するものではないと思う。
当社の国内縫製の子会社が福井県大野市にある。そこでは人口が減少し高齢化が著しく、65歳以上の人口比率は全国平均をはるかに上回っている。その様な立地の会社で、10年ほど前は60歳を超えた社員が例外的に雇用を延長していたのが、既に60歳以上が半数近くになり、65歳を超えての雇用も増加しつつある。その様な状況の中で、ここ数年毎年最低賃金の上昇に合わせ賃金を見直してきたが、経営にとっては大変厳しい足かせとなっている。
アトキンソン氏の言う付加価値だが、縫製産業は二次産業の中でも一番低い方だ。しかし、一次産業の付加価値と比較すると、土地面積当たりの収益性等を比較すると生み出す付加価値ははるかに高かった。福井県大野市という立地の中で、収益性の高い高付加価値の事業を生み出せるかというと、私の経営力では難問だと感じている。もちろん、インターネットの販売では海外生産と区別して、日本製を表示して販売するようにしなければならないが、海外製との価格差について、コストの差ほど付けることは出来ていない。
企業として、今日65歳までの雇用継続は社会貢献として必要と思う。また、賃金についても政府の方針に従っていくようにしなければならない。しかし、66歳からの雇用については、最低賃金の枠は取り外し、本人の選択制にして、フルタイムでない場合は、時給、勤務時間等、フレックスに決められるようにしはどうかと思う。コストに見合わないからと言って、働ける場を狭めることは地域経済にとっても良いこととは思えない。