当社は婦人下着業界として、日本ボディファッション協会に所属している。昨年その総会で発表された統計では、この10年間で市場規模が毎年3%縮小し、10年で業界全体の売り上げ規模が2/3に縮小した。ここへきて、店舗の不振が目立ち、SPA型で売り上げを伸ばした会社も、ショッピングセンターの優劣が始まり、不採算店舗を撤退するなどで、各社売り上げを減少させている。達の悪いのは、数量は減っておらず、単価が下がっていることだ。それだけ付加価値も下がっており、資材を供給する国内サプライヤーの影響はもっと大きい。この傾向は、下着業界だけでなく、アウター等衣料品全般にも言える。むしろ、下着業界の方は環境激変が弱い方かも知れない。
しかし、その様な環境の中でも、しっかり売り上げを伸ばし頑張っている企業がある。掲載の許可を得た訳では無いので、差し支えない範囲での紹介になるが、その様な優秀な企業も、私達の業界にあることをお伝えしたい。既に4月のブログで紹介した、県内の衣料関係のネット販売企業、海外の同業だけでは片手落ちになり、良い機会だと思う。
最初に紹介するのは、大阪の会社だ。元々は彦根の地で創業、量販店を中心にファンデーションを販売していた。創業当時は、量販店が業績を拡大していた時期で、その伸び共に業績を拡大してきた。しかし、90年代後半から、淘汰の時代に入り、2002年には、一旦繊維商社の傘下に入り、本社を大阪に移した。その後だが、主力販売先を「しまむら」に移し、売り上げも50億を超えるまでに回復している。
前々から、他の同業からは、同社が「しまむら」をフォローしている東京支店のことは聞いていた。現在そこには、主に営業と企画で20名を超えるスタッフが働いている。同社のデザインは売れるというジンクスが出来ており、数ある同業の中でも、抜群の信頼をバイヤーから獲得していると聞いていた。しかし、簡単なことではない。毎週月、火の商談日に気の利いた提案が出来なければ、バイヤーからは相手されない。提案だけでなくあらゆる売り場の動向の報告、商品の的確な納品スケジュールの提示等、担当者となる営業窓口は、土日を含め、24時間専念する気持ちでなければ勤まらない。また、バイヤーの多くが、TES(繊維品質管理士)の資格を取っており、納入する側の多くも、その様な資格を取った者を担当者に付けている。また、海外の展示会にも積極的に参加させており、お付き合い上、さらに、情報遅れにならない為にも、パリ等の展示会には参加している。同社の商品が「しまむら」で売れる理由も、真剣な企画提案とスピード感のあるキメ細かい対応を、常に心掛けているからだろう。
当社では、過去、量販店との直接のお取引をした経験は無く、地理的にも、埼玉県上尾までは遠く、魅力的なお取引先ではあるが、当社の実力を考えた場合は、取引を行うことは、他社が真似出来ないオリジナル商品でない限り無理と判断している。
量販店の衣料品売り場は年々売り上げを落としており、その分がユニクロ、しまむら、ネットが増加している。その分、しまむらへの競争も相当激しいことと思う。その様な中で、ご紹介の会社は、年々シェアを伸ばしている。大したものだ。
今回、親しくしていた繊維商社の方が、常務として転籍されることもあり、お願いして会社訪問させて頂いた。現社長は創業者の時代からの生え抜き。現在柱になっている東京にいる幹部も、2002年に10数名にリセットした時の生き残りだと紹介を受けた。
この業界だが、企画、営業の部隊が東京にシフトする傾向がある。大阪は、経理、総務等の本社機能だけかと思っていたが、こちらも、企画やサンプル作成の人員を含め20名を超えている。この業界のトップ企業が京都にある為か、東京でデザイナーや特にファンデーションの設計に携わるパタンナーを探すよりは、大阪の方が容易だ。東京から大阪に出張する場合は、必ず全員分のお土産を準備しなければならないのが伝統の様だ。東京、大阪併せて分厚い企画体制が出来ている。
現社長の言葉からは、二度と過去の経験は繰り返したくないという、気概を感じる。東京の幹部を含め、そのことが、厳しい同業との競争から勝ってきた秘訣なのだろう。メインの取引先以外に浮気をせずに、そこをフォローしようとする姿勢も「しまむら」から信頼を得ているのだと思う。
同社と当社だが、同じ業界の下着メーカーとはいえ大きく異なっている。片方は大手量販店から、商品企画を提案し受注を貰い、それを海外協力工場に生産を委託している。当社の方は、直営の海外工場で、品質管理や納期管理徹底し、そのことで生産背景に信頼を得て、主に、インナーアパレルのOEM、ODMで受注するのを得意としている。過去、量販店等の卸をしたことが無い。接点は少ないが、海外資材情報の共有化、企画の進め方や海外工場の運営等で情報交流出来ればと思う。
今回、繊維専門商社より、親しい方がそちらに常務として転籍した。商社のテキスタイルの商売と、量販をお守りする製品ビジネスではやり方が違う。慣れるまで苦労すると思うが、是非頑張ってほしい。